大阪でアルバイトをしている人、これから仕事を探している人、そして飲食店を経営している人にとって、2026年の最低賃金引き上げはかなり大きなニュースです。
大阪府の最低賃金は、現在の1,177円から54円引き上げられ、1,231円とすることが適当との答申が出されました。大阪労働局によると、2026年8月7日に大阪地方最低賃金審議会から答申を受け、今後、改正手続きが進められます。(都道府県労働局)
「54円アップなら、そんなに大きな変化ではないのでは?」
そう思う人もいるかもしれません。
しかし、私はベーカリーカフェを運営していますが、店舗を実際に運営する側から見ると、今回の54円アップは単純な54円の問題ではありません。
既存スタッフの時給、採用時給、店舗全体の人件費、商品価格、さらには「そもそも何円なら人が応募してくれるのか」という採用競争まで影響してきます。
この記事では、2026年の大阪府最低賃金1,231円について、
- いつから適用されるのか
- アルバイトの給料はいくら増えるのか
- 飲食店の人件費はいくら増えるのか
- 時給1,300円は高いのか
- 時給1,500円の時代は本当に来るのか
を、飲食店の現場目線も交えながら考えていきます。
2026年の大阪府最低賃金は1,231円へ
現在の大阪府最低賃金は1,177円です。
2026年度について、大阪地方最低賃金審議会はこれを54円引き上げ、時間額1,231円とすることが適当と答申しました。(都道府県労働局)
つまり、1,177円 → 1,231円で、+54円となります。
上昇率は約4.6%です。
※この記事執筆時点では、1,231円は審議会の答申を踏まえた改定内容です。大阪労働局は今後、正式な改正手続きを進めるとしています。(都道府県労働局)そのため、「1,231円になる」という金額と、実際の発効日は分けて考える必要があります。
大阪の最低賃金は2年間で117円アップ
今回の54円アップだけを見ると、それほど大きく感じないかもしれません。
しかし、2024年度の大阪府最低賃金は1,114円、2025年度は1,177円でした。
| 年度 | 最低賃金 |
| 2024年度 | 1,114円 |
| 2025年度 | 1,177円 |
| 2026年度 | 1,231円(答申) |
2024年度と比較すると、1,231円 − 1,114円=117円です。
わずか2年間で117円。
アルバイトをたくさん雇用する飲食店にとっては、かなり大きな変化です。
最低賃金1,231円になると、バイトの給料はいくら増える?
最低賃金で働いている人の場合、時給は54円増えます。
例えば月100時間働く場合、
54円 × 100時間=5,400円です。
年間では、
5,400円 × 12カ月=64,800円となります。
同じように計算すると、
| 月の勤務時間 | 月の増加額 | 年間の増加額 |
| 50時間 | 2,700円 | 32,400円 |
| 80時間 | 4,320円 | 51,840円 |
| 100時間 | 5,400円 | 64,800円 |
| 120時間 | 6,480円 | 77,760円 |
働く側からすると、同じ時間働いても収入が増えるため、嬉しい改定です。
一方、雇う側からすると、この金額がスタッフ一人ではなく店舗全体に積み重なることになります。
飲食店は「54円上げれば終わり」ではない
ここが今回の最低賃金引き上げで、私が一番重要だと思っているポイントです。
例えば、ある飲食店の時給が、
- 新人:1,177円
- 一般スタッフ:1,220円
- 経験者:1,270円
- リーダー:1,350円
だったとします。
最低賃金が1,231円になれば、新人は1,231円以上にする必要があります。
すると、最低賃金だけに合わせた場合、
- 新人:1,177円⇒1,231円
- 一般スタッフ:1,220円⇒1,231円
- 経験者:1,270円⇒1,270円
- リーダー:1,350円⇒1,350円
という現象が起きます。
新人と経験者の時給差がなくなってしまうわけです。
もちろん、実際の時給設定は店舗によって違います。
ただ、最低賃金が上がることで、
新人の時給を上げる
↓
既存スタッフとの差が縮まる
↓
既存スタッフの時給も見直す
↓
リーダーなどの時給も見直す
という流れが起こる可能性があります。
つまり、店舗側からすると**「54円アップ」以上の人件費増加になる可能性がある**のです。
大阪の飲食バイトは、すでに時給1,300円が見えている
大阪のアルバイト市場では実際にどのくらいの時給で募集されているのでしょうか。
求人サイト「バイトル」では、2026年8月時点の大阪府のフード・飲食求人について、掲載求人の平均時給が1,277円となっています。(バイトル)
さらに、同サイトには、時給1,300円~1,600円という飲食店の求人も掲載されています。(バイトル)
これは非常に重要です。
最低賃金が1,231円になったからといって、「1,231円で募集すれば人が集まる」とは限らないからです。
最低賃金はあくまで法律上の最低ライン。実際の採用市場では、店舗同士が人材を取り合っています。
時給1,300円は本当に高い?
最低賃金が1,231円になると、時給1,300円との差は、69円しかありません。
つまり、
最低賃金:1,231円
募集時給:1,300円
差額:69円 です。
「時給1,300円」と聞くと高く感じる人もいるかもしれません。
しかし最低賃金から見ると、わずか69円の差です。
例えば、「未経験なら1,231円」「経験者なら1,300円」
という設定にしたとしても、経験者にとっては、
「責任や経験に対して、69円しか違わない」と感じる可能性があります。
これからは単純に最低賃金を見るのではなく、
「最低賃金+いくらなら、その仕事を選んでもらえるのか」
という考え方が重要になってきそうです。
ベーカリーカフェを運営していて感じる「製造スタッフ」の難しさ
私はベーカリーカフェを運営しています。
その立場から特に難しいと感じるのが、パンの製造スタッフの採用です。
パンの製造は、
- 早朝勤務がある
- 体力を使う
- 覚える作業が多い
- 一定の技術が必要
- 繁忙時間に合わせた勤務が必要
など、一般的なアルバイトと比べても仕事内容に特徴があります。
ところが、近隣の飲食店やスーパーなどと時給がほとんど変わらなければ、
「それなら、もっと楽な仕事を選ぼう」となってしまう可能性があります。
最低賃金が上がれば上がるほど、こうした問題は大きくなります。
だから店舗側としては、
「最低賃金はいくらだから、その金額にする」
ではなく、
「この仕事をしてもらうためには、いくら払う必要があるのか」
という考え方が必要になると思います。
最低賃金54円アップで、飲食店の人件費はいくら増える?
例えば、店舗全体でアルバイトが月5,000時間働いているとします。
最低賃金の54円アップ分だけを単純計算すると、
5,000時間 × 54円=27万円/月 です。
年間では、27万円 × 12カ月=324万円になります。
もちろん、実際には全員が最低賃金で働いているわけではありません。
また、最低賃金の上昇によって全スタッフの時給を同じだけ引き上げるとは限りません。
しかし、
- 新人の時給アップ
- 既存スタッフの時給調整
- 採用時給の引き上げ
- リーダー・責任者の時給調整
などが重なると、実際の人件費増加はかなり大きくなる可能性があります。
「時給を上げる=悪いこと」ではない
ここは飲食店を運営する側として、個人的に重要だと思っています。
人件費が上がると、「どうやって人件費を削ろう?」と考えたくなります。
しかし、人手不足の店舗では、むしろ時給を上げることで経営が良くなるケースもあります。
例えば、
- 求人への応募が増える
- 採用までの期間が短くなる
- 欠員が減る
- 営業時間を維持できる
- 既存スタッフの負担が減る
- 離職が減る
といった効果があれば、単純な「人件費アップ」ではありません。
時給を100円上げた結果、採用が改善して売上機会の損失が減るなら、その100円はコストではなく投資と考えることもできます。
では、時給1,500円の時代は来るのか?
ここが今回、一番気になるところではないでしょうか。
大阪府の最低賃金が1,231円になると、時給1,500円との差は269円です。
現在でも大阪府の飲食求人には、1,500円を超える募集があります。
そのため、「時給1,500円」という数字自体は決して非現実的ではありません。
ただし、大阪の飲食バイトが一斉に時給1,500円になるという話ではありません。
重要なのは、最低賃金の上昇に加えて、
人手不足による採用競争が続いていることです。
最低賃金が上がれば、1,300円の求人が「かなり高い求人」ではなくなり、さらに人を集めるために1,400円、1,500円という求人が増える可能性があります。
特に、
- 早朝勤務
- 深夜勤務
- 専門的な技術が必要な仕事
- 人手不足の地域
- 繁忙時間帯
などでは、平均より高い時給が必要になる可能性があります。
飲食店は「最低賃金」ではなく「採用市場」を見る時代へ
最低賃金は、あくまで最低ラインです。
例えば最低賃金が1,231円だからといって、
「うちも1,231円で募集しよう」
では、採用競争に勝てない可能性があります。
周辺の飲食店が1,300円なら1,300円。
1,400円なら1,400円。
製造スタッフが特に集まりにくいなら、それ以上。というように、
「自分の店が必要とする人材を採用するには、いくら必要なのか」
を見る必要があります。
これは今後、飲食店経営でますます重要になると思います。
人件費アップをどうやって回収する?
では、上がった人件費をどうするのか。
考えられる方法はいくつかあります。
客単価を上げる
単純な値上げだけではなく、
- ドリンクセット
- サイドメニュー
- デザート
- 高単価商品の開発
などで客単価を上げる方法があります。
高粗利商品を増やす
売上だけを見るのではなく、どの商品が利益を生み出しているのかを見ることも重要です。
生産性を上げる
同じ人数でも、作業方法を見直すことで必要な労働時間を減らせる場合があります。
採用時給を上げる
あえて周辺店舗より高い時給を設定し、採用力を高める方法です。
人が集まらないことで発生する売上機会の損失まで考えると、時給アップが結果的に利益につながる可能性があります。
まとめ
“1,231円は「ゴール」ではなく新しいスタートライン“
2026年度の大阪府最低賃金は、現在の1,177円から54円引き上げ、1,231円とすることが適当との答申が出ています。(都道府県労働局)
アルバイトで働く側からすると、同じ時間働いても収入が増えるため、大きなメリットです。
一方、飲食店にとっては単純な54円アップでは終わらない可能性があります。
新人の時給が上がれば、既存スタッフとのバランスを取る必要があります。
さらに、周辺店舗の募集時給が上がれば、自店も採用時給を上げなければ人が集まらなくなるかもしれません。
私はベーカリーカフェを運営していますが、今回の最低賃金引き上げを見ていて感じるのは、
「最低賃金がいくらになるか」よりも、「実際に人を採用するためには、いくら払う必要があるのか」が重要になってきたということです。
大阪の飲食求人では、すでに平均時給1,277円、1,300円~1,600円といった募集も見られます。(バイトル)
最低賃金1,231円は、これからのアルバイト時給を考えるうえでの新しいスタートラインなのかもしれません。
今後、時給1,300円が当たり前になり、1,400円、1,500円という時給も珍しくなくなるのか。
そして飲食店は、その人件費をどうやって売上と利益につなげるのか。
2026年以降の飲食業界では、「安い時給で人を集める」から「適正な時給を払い、その分だけ生産性と利益を高める」への転換が、さらに重要になっていきそうです。
※本記事は2026年8月21日時点の情報をもとにしています。大阪府最低賃金1,231円については、大阪地方最低賃金審議会の答申をもとにしています。正式な発効日・制度内容については大阪労働局の最新発表をご確認ください。

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