飲食店の経営において重要な項目のひとつである『原価』
昨今の世界的なインフレによる仕入れ価格の高騰で、原価が経営を圧迫している店舗も多いのではないでしょうか。
私は現在パン屋の経営をしていますが、原材料が高騰しているここ数ヶ月間を含め毎月計画通りの原価率に収めることができています。パン屋の原価率は一般的には25-30%と言われていますがそれを下回ることも多々あります。
もちろんただお客様に割高で価値のない商品を提供しているわけではなく、しっかりと売上をたてて利益を獲得している状態での数値です。
今回の記事では、原価率コントロールのにコツついて解説していきたいと思います。
パン屋ではなくても飲食店や物販店も参考になる部分があるかと思いますので、是非ご覧ください。
原価率が1%下がることの重要性を再確認
原価率1%分の金額は月間売上500万の場合 ➡5万円です。
月間売上500万円はパン屋さんの売上規模としてはそこまで大きくはない中間クラスですが、1日あたり約1,666円材料費が浮くことになります。
地域差はありますが毎日のアルバイトスタッフにかかる時給1時間~1.5時間分ほどの金額にはなりますね。
クレジットや電子マネーの支払手数料も月間5万円前後ではないでしょうか。
まず原価率を1%下げることができた場合、これくらいの費用が抑えられることになるという認識を持ちましょう。
原価コントロールできる環境を整える
前提として、販売している全商品の原価計算・原価率把握ができていること。
また調理スタッフが複数いる場合は、人によってレシピに大きなブレがないこと。
➡(例えば従業員Aさんはクリームパンの中身が40gなのにBさんは50g入れている等)
上記2点が最低条件です。
『売り込み商品』は別の考え方を
本題に入る前に、『売り込み商品』(ランキング上位1~5位商品について)の考え方です。
原価コントロールをしていく中では、売り込み商品の原価率はそこまで気にしなくて良いです。
売り込み商品の考え方で重要なのは、《リピート率》《量産性》《売価》です。
顧客満足度が上がるのであれば、原価率は多少高くても大丈夫です。
しかしあからさまなサービス商品は良くないので原価率40%以下は守ってください。
来店動機に結び付けられるような特徴のある商品を選択したいですね。
①リピート率
パン屋(飲食店)はリピーター獲得ビジネスです。
これを食べれば絶対また来てくれると確信のある商品を上位商品に育ててください。
②量産性
売り込み商品は顧客の興味を惹きやすく、それなりの販売量が期待できるため必ず量産できるものを選択してください。常に店頭に置いてなければ意味がないです。
ランキングを掲げていない場合はすぐに掲げて、他の商品とは違う特別な商品であることをアピールしましょう。そして上位商品の焼成の回数を増やしてください。
③売価
パン屋は薄利多売ビジネスと言われています。
そんな中で顧客が興味を持ちやすい売り込み商品を低価格に設定してしまうと、何個パンを売っても利益が出ません。
メイン商品の売価は売上高に直結するため家賃や従業員の給料、水光熱費等のその他固定費の割合を下げるために非常に重要です。
『競合に比べて安い』は大事ですが、こんなに安くて大丈夫?と思われるような売価は販売数量上位の商品については避けるべきだと思います。
『お客様に人気だから』といってオペレーションが複雑な低価格商品を作り続けても、結果には結びつきにくいです。
商売として考えて経営にとって都合の良い商品を選択して育てていきましょう。
どれだけ美味しくても数年で潰れる店舗を経営しては意味がないので、お客様目線で考えすぎないことです。
【結論】原価率を1%下げるには?
開店直後のラインナップについて
開店直後には、まだパンが全種類焼きあがっていない店舗が多いと思います。
基本はピークにかけて徐々に焼き上げて品数が増えていきますよね。
そこで重要なのが開店直後に焼きあがっている商品の平均原価率は、全商品の平均原価率よりも低くすることです。
早い時間帯に製造されるということは、それだけ店頭で売れる確率が高くなるということです。
原価率が平均よりも低い商品が早い段階で売り切れてしまった場合は、再度焼成することによって原価率が下がるか最低でも維持できますが、これが原価率が高い商品の場合は全体の原価率が上がります。
陳列や販促物でコントロールする
陳列配置またはメニュー表の配置により、目が行きやすい場所に原価率の低い商品を置くことで売れ行きをコントロールできます。
販促物や商品の陳列ボリュームも大切です。しかし、原価率ばかりに注目すると店舗の魅力が落ちて見えるので注意してください。
商品の入れ替えや限定
例えば現状の原価率31%から30%にしたい場合は、原価率31%を超える商品を20%代の商品に入れ替え、または販売を終了するだけで済むこともあります。
入れ替えが難しい場合は製造数量を限定するのもひとつです。
値上げやポーションダウンはイメージが悪くなるため、商品の入れ替えが一番効果的です。
旬の具材を使用した商品の入れ替えによって季節感が出ると一石二鳥で良いと思います。
原価率を抑えるのは難易度が高いと考えやすいですが、難しく考えすぎないようにしてください。
廃棄ロスについて
原価率コントロールのためには、パン屋独特の廃棄ロス(販売ロス)についてもよく考えなければいけません。
しかし廃棄ロスを減らすための割引販売はかなり慎重に考えたほうが良いです。
『毎日この時間に行けば割引商品がある』と根付くと、割引時しか購入しない客が増える可能性があります。
それによって売上自体が落ちて行き、結果的に原価率があがります。
まとめ
・原価率1%分の金額は把握しておく。
・原価率コントロールできる環境を整える。
・売り込み商品の考え方で重要なのは原価ではなく、《リピート率》《量産性》《売価》
・原価率を1%下げるには【開店直後のラインナップ】【陳列や販促物】【商品の入れ替えや限定】が重要。
・廃棄ロス対策としての割引販売は逆効果になることも多いため慎重に。
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